Ryu's Rock Life Blog

シンガーソングライター、ボーカリスト、ボイストレーナーとして活動するRyuのブログ

ボイストレーナーになったきっかけ

歌手になりたくて20歳でサラリーマンを辞めた。
上京して、ミュージシャンとしてCDデビューするまでにいくつものバンドに参加した。

当時、バンドのメンバーを探すには、スタジオの貼り紙か音楽雑誌のメンバー募集欄が頼りだった。雑誌の中で一番メンバー募集欄が多いのが、プレイヤーという雑誌で、オレも毎月購入していた。
24歳の時にそこで、趣味が合いそうなバンドで『ボーカル募集。完全プロ志向。当方、事務所に入っていてデビューが決定しています。』というのを見つけた。

 

オーディションで彼らと音を出した瞬間にとてもキモチ良かったのを覚えている。ギターとベースとドラムがばっちり合っていて、オレは自由に歌うだけで良かった。
デビューが決まっているバンドはやっぱりスゴイな、カッコいいなと思った。
音は、ストリートスライダースやシェイディドールズの様なローリングストーンズ寄りでオレの作る曲調とも合っていた。

そのオーディションに受かったオレは、それから2、3年の間、彼らとバンド活動をした。
シオンやコレクターズ、デル・ジベットなどが在籍する事務所で、いいライブを組んでくれたり、作詞家の岡本おさみさんを紹介してくれて、オレの歌詞を見てもらったりした。事務所の好意でオレの好きなシオンのライブは何回も観させてもらった。

 

そんな順風満帆だと思っていたある日のこと、スタジオに入ると突然ベーシストが「みんなごめん。オレ辞める」と言った。
彼女に子どもができたと。みんなと夢を追うのはもうできない、と。
今ならその切ない気持ちが痛いほど良くわかるが、その当時は、バンドに人生を賭けているのにーと、やり切れない思いでいっぱいだった。
それでも関係は壊れることなく、みんなでおもちゃを買って、生れた子どもに会いに行ったりした。彼は結婚して幸せそうだった。

 

バンドはというと、ベーシストが辞めるタイミングで、ドラマーがびっくりすることを言った。
「オレ、ボーカリストに転向したい」
もう、バンドは解散するしかなかった。


それからドラマーだった彼は、アコースティックギターで弾き語りを始めた。
ある日、電話があった。
Ryuくんみたいに大きい声で歌いたい。教えて欲しい、と。
人に教えたことはないし、どうしたものかなと考えたが、彼はとてもいい声をしていたし、仲間を応援したかったのでやってみることにした。

 

先ずは、自分がどうやって大きい声で歌えるようになったのかを思い出してみた。
ハタチからいろんなバンドをやって来た中で、スパルタでオレを凄いボーカリストにしようとしてくれたギタリストがいた。
彼は、バイトの先輩にアイボリーゲートというヨーロッパでも有名な日本のハードロックバンドのミュージシャンがいて、しきりにボーカルの大切さを聞かされていたらしく、オレを徹底的にしごいた(笑)

 

一日おきに一緒にスタジオに入り、ピアノを使って低い音から高い音まで2時間きっちり限界まで声出しをした。半年以上やったと思う。
彼もボイストレーナーではないから、理論は一切なく、感覚的なトレーニングだったが、今思えば、昔の演歌歌手が毎日山に向かって練習してましたと言うのと似ている気がする。
要は、日々の努力。その中で、これか!というコツを掴む瞬間が訪れる。
そうすればしめたものだ。そこから声をどんどん磨いて行けばいいのだ。
オレはそこで、腹式呼吸と喉を開いて歌うコツを掴んだ。

 

その後、ドラマーだった彼と一緒にスタジオに入って特訓をした。
彼は、コツを掴んでいいボーカリストになった。
テレビ東京アマチュアミュージシャン参加の番組でグランドチャンピオンにもなった。
誰にも言っていないが、オレがボイストレーナーになったきっかけは彼だ。
彼がいいボーカリストになったから、人に教えてもいいと思った。
いつか一緒に飲んでそんな話をしたいな。

 

オレは、バンド仲間に鍛えられ、その後、二つの音楽スクールでボーカルを学んだ。

一人は日本人でもう一人の先生は、イギリス人だった。
教えてもらうというのは、素晴らしい経験だった。
モチベーションも上がるし、自分のボーカリストとしてのカラーもわかる。そして何よりひとりよがりにならなくて済む。

ただ、オレは歌(ボーカル)は教えないことにしている。
ボイストレーナーとして、呼吸と発声をしっかり教えて、それが出来るようになったら自由に歌って欲しい。
歌(ボーカル)は、その人なりの表現じゃなくちゃ面白くない。
オレもバンドで歌うときは、いっさい上手く歌おうと思わないし、ビブラート等のテクニックを使おうとも思わない。
感情のままに歌う。それだけだ。
やってるのがロックだからかも知れないが、そうじゃなきゃ面白くない(笑)
なんだって面白くなきゃね。
 ボイストレーナーらしくないかも知れないけど、歌は自由に楽しく歌うのが一番だ(笑)