子どもの頃に買ったおもちゃを売ったら7倍になった話
『あの頃の自分に言ってあげたい。未来はとっても楽しいって』
そんな風に、感極まって泣きながら語る人をテレビでたまに観ることがある。
「ま、オレには無いな。そんな話」とついこの間まで思っていた。
しかし・・・
今から遥か昔の冬のある日、小学生のオレは母と姉と3人で町に出掛け、お年玉で何かおもちゃを買おうと意気込んでいた。
昔から即断即決のオレ。
高さ60センチもある『ジャンボマシンダー』が一発で気に入った。
当時5000円はしたと思う。
そして、お年玉はそれを購入してほぼほぼ終了した。
姉は何か金額的に小さいものを購入し、買い物が終わった3人はデパートでランチを食べることにした。
そこであろう事か、オレは突然ひっくひっく泣き出したのだ。
ま、ランチを食べれるくらいのひっくひっく具合だが。
その時の気持ちは、今でも容易に思い出すことが出来る。
もの凄く欲しいモノを手に入れたが、すっからかんになってしまったことで切なくなり、感情が波となって押し寄せて来たのだ。
その夜、父と話をした。
欲しかったんだろ
うん
自分で買うって決めたんだろ
うん
カッコイイじゃないか
うん
そんな感じだったと思う。
男だもんな。腹括らないとな。
言葉にはしないが、そういうニュアンスだった。
オレは子どもだったが、そこでひとつ大人になった。
それから、昼はもちろんそれで遊び、夜には枕元に置いてニコニコで眠りについたものだ。
子どもの頃の経験は、その後に色濃く現れた。
オレは大人になり、購入したモノで一切後悔しない体質になった。
後悔しないどころか、買ったモノや手に入れたモノを眺めては、いいチョイスしたなぁと何度も愛でるほどだ(笑)
すっからかんも怖くない。
例えは違うかもしれないが、車のガソリンなんか給油ランプが点くまで入れたことがない。
話を戻そう。
倉庫を整理していたら、このジャンボマシンダーがひょっこり出て来た。
22年も家に帰ってなかったのに、親が取っておいてくれたのだ。
箱はくたびれてはいるが、本体はキレイだ。
一人でちょっと遊んでから、考えた末にオレはこれを売ることにした。
何故か。
それは、使われず飾られもしないより、誰かに遊んでもらった方がいいからだ。
モノは使われてこそだ。
そう思ったのは、もしかしたら最近『トイストーリー』を見たせいかもしれないが(笑)
何にしろ、保管だけしておくというのでは意味がない。
よし、売ろう。
次に考えたのは、どうやって売るかだ。
手段はいろいろある。
・ヤフオクやメルカリ
・おもちゃの買い取りサイト
・実店舗
そういえば、最近友人に教えてもらったアンティークショップがあり、亡き父の腕時計を修理依頼したことがあったな。
そうだ、そこにしよう!
あそこの店主は感じが良かった。
理由はカンタンだ(笑)
そしてそれ以上の理由など必要ない。
連絡を入れると、数日後に来てくれた。
ジャンボマシンダーをじっくり見て、しばし沈黙。
「3万5千円でどうでしょう」
もちろんオッケーですと返事をした。
言い値でいいのだ。
手離すのだから、気持ちのいい取引をしたいのだ。
売る人も買う人も仲に入る人もみんな笑顔というのが一番いい。
そのあと、ほかのおもちゃも何点か見てもらった。
値段が付かないものは、よかったら持って行きませんかとこちらからお願いしたりもした。
最後に「どれもきれいですね~」と褒められた。
ソフビ人形などは、足の裏に名前を書いていることも多いそうだ。
車を見送って、ふとあの時のオレに会いたくなった。
昔の泣いていたオレよ、大人になってから売ったら7倍になったぞ!
な、笑っちゃうよな。
ほら、泣いてたらオムライスの味がわかんないぞ。
お前の選択は間違ってなんかいない。
さあ、家に帰って思う存分、それで遊べ遊べ!!
何にも気にするな。
だって未来は絶対に楽しいからさ。